ペットアドバイザー科 講師からのメッセージ

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日本にはどれほどの数の犬が飼われているの?

 

実は、今飼育されている犬全体の数を調査する方法はありません。統計データがないのです。国が行う調査、業界団体や企業によるアンケート調査などがありますが、実際に飼われている犬がすべて登録されているわけではないので実態を反映していることにはならないからです。ですから、あらゆる調査や推計であっても、約650万頭(平成25年度全国登録頭数、総務省統計局)とか、約1087万頭(平成25年全国犬猫飼育実態調査、ペットフード協会)というように結果が異なるのです。

飼われている犬の数はわかりました。では、犬を飼う人はどれほどいるの?

犬を飼っている人の数字は、「飼育率」で推計することができます。市町村単位での人口と世帯数調査を元に、地域において飼われている犬が世帯ごとで何頭かを仮定します。表1は愛知県岡崎市の平成21年から25年までの犬の全登録頭数と世帯数から100世帯当たりの飼育頭数を飼育率として算出したものです。全登録頭数とは狂犬病予防法で飼い主の義務とされている犬の登録数の総数です。すなわち、既存の登録数に年度ごとの増減を加味したものが、「飼われている犬の数」と仮定することができます。平成25年度の飼育率17.3%は岡崎市で飼われている犬は25,729頭であって、世帯数は149,060世帯であることから、100世帯で17.3頭の犬が飼われている計算になります。図1は岡崎市の全登録頭数と世帯数の5年間(H21~25年)の推移をグラフにしました。どちらも横ばい、ほぼ増えても減ってもいない、といえます。

岡崎市の17.3%というのは多いの?少ないの?いまひとつピンときません。

平成25年度岡崎市の飼育率17.3%は、全国的にみても“高い”ほうだと言えます。表2に名古屋市、全国での飼育率を算出しましたいずれも100世帯に12頭という割合ですから、岡崎市は犬を飼っている人が多い、と言えます。しかし、平成27年の岡崎市の世帯数は15万世帯を超えています。もし将来、岡崎市で犬を飼う人が増えないのに世帯数と人口は増えていくとなると飼育率は下がってしまいます。世帯数や人口の増減は地域によって増えたり減ったりするものですから、飼われている犬の数が増えていても、飼う人の数も増えていれば、飼育率は変わらないことになります。

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全国での飼育率は減少しているの?

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ある調査によると、ここ数年、全国の犬の飼育頭数は減少傾向にあるとされています。国勢調査によると全国の人口は減少傾向であるのに世帯数は増加傾向にあるそうです。このまま飼われている犬の頭数が変わらずに世帯数が増えるのであれば、世帯別の飼育率は下がり続けることになってしまいます。

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これからは“量より質”の時代へ

では、犬の数が減っているのでしょうか。犬の数を知る方法の一つに、一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が公開する年間犬籍登録頭数があります。ブリーダーの元で生まれた子犬はブリーダーからの申請に基づいて犬籍簿へ血統登録がなされ、血統書が発行されますPAメッセージ図形3。犬籍簿の管理や血統書の発行等を行う団体は多数ありますが、日本ではJKCが最も多く扱っているので、1年間の登録数が年間で生まれた子犬の数として考えやすい、といえるのです。 図2は年間の子犬登録頭数の推移に動物取扱業者数(第一種動物取扱業のうち、動物販売業の登録数)の推移を重ねたものです。このグラフをみると、平成18年から23年まで、子犬の数は減っているのに動物取扱業者の数は増えていることがわかります。(ちなみに、私たちの学校がある愛知県は全国でも動物取扱業者が多い地域です(表3)。) しかし、ここでも実際に飼われている子犬の頭数について実態を知ることはできません。先述しました通り、犬の血統登録を行う団体は国内外を含めて多数ありますし、いわゆるミックス犬は数字に入っていません。(ミックス犬は、父犬・母犬はそれぞれ純血種ですが、両親が別々の犬種の組み合わせで生まれた子のことです。ハーフ犬、混血種とも呼ばれます。) このように、一言で「飼われている犬の数は?」と言っても、いざ調べようとするとさまざまな数字の見方があるのです。

さまざまな視点で正面から向き合える柔軟さを持つこと

私たちペットアドバイザー科は企業さんとの提携によってこのようなペットの実際を肌で感じることができます。言い換えれば、“ビジネス的”な考え方、プロダクトアウトの立場とマーケットインの立場の両側に立って考えることで多様な視点をもてるようにしたい、もって卒業してほしい。私たちはそう思います。時代は変化しています。確実に言えるのは、今は昔のように量を求めるのではなく、質を求めるように企業側も消費者側もなってきています。だから繁殖・販売に関してさまざまな視点で正面から向きあえる柔軟さをもつこと。それが目標です。

2017.6.29.f

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